『保健室のアン・ウニョン先生』著:チョン・セラン

ドラマ化も楽しみ! ヒロインは「見えちゃう」養護教諭

何度「アン・ウニョンせんせー」と、声を上げて笑ったことだろう。「コロナ」自粛の重苦しさがさっと晴れた。即、この花柄好きで悪態ばかりついている、パワフルでキュートなアン・ウニョン先生と、コロナ・パンデミック渦中の世の中に、荒ぶるヒロインを送り出してくれた著者チョン・セランの大ファンになってしまった。

養護教諭アン・ウニョンは、幼いころから見えないものが見えるという特殊能力を持っていて、赴任先の私立M高校内に漂う不穏な空気を感じていた。その悪い予感通り、原因不明の怪奇現象や不思議な出来事がつぎつぎと起こる。ウニョンは特殊能力を駆使して、謎や悪なものに立ち向かい、戦う。怪奇現象に潜む学校・社会問題をあぶり出していくことも忘れない。「アン・ウニョン10の事件簿」とも呼ぶべき連作作品集である。

まっさきに噴き出してしまったのは、彼女がいつもバッグにしのばせている、悪なものと戦うための武器だ。それはBB弾の銃とレインボーカラーの折り畳み式のおもちゃの剣。彼女は、校内に漂う高校生たちのエッチな妄想さえも「エロエロゼリー」状に見えてしまい、あまりにうっとうしいときは、おもちゃの剣を取り出して〈ひゅい、ひゅい〉と〈ぶった切〉る。そのふにゃふにゃ感が笑える。しかしクライマックスの決戦で、正体を現した悪霊にBB弾の銃を構えるアン・ウニョン。ほとばしる魂の雄たけびとともにBB弾をぶっ放す大スペクタクルシーンは、コロナと戦うヒロインにみえて、拍手喝采ものだ。

韓国ではドラマ化が決定しているという。早く観たい。願わくば、日本でリメイク版もつくってほしい。ファンの希望と興味は尽きそうにない。

『保健室のアン・ウニョン先生』
著◎チョン・セラン
訳◎斎藤真理子
亜紀書房 1600円