写真のなかの伯母は、おしゃれで笑顔。かわいがってもらったのに、恩返しできなかったな……と思う…(写真:stock.adobe.com)
時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは愛媛県の50代の方からのお便り。認知症で施設に入る伯母の住まいを片付けることになり――。
過去を捨てるということ
母の姉である伯母が認知症になり、施設へ入ることになった。伯母は独身のため、私が彼女の住まいを片付けることに。
家にあるものは「ぜんぶ捨てていい」としか言われず、施設に持っていけるのはごく一部の身の回りの品だけ。家には定年まで働いて買いためた家具や食器、洋服などが大量に残されていた。
一つひとつに彼女の思いが残っているようで、じっくり見ていると片付けが進まない。そこで何も考えずごみ袋へ放り込もうと決めた。
しかしアルバムや写真を前に心が波立つ。旅行好きだった伯母。友人はもちろん、私ともよく一緒に旅行した。写真のなかの伯母は、おしゃれで笑顔。かわいがってもらったのに、恩返しできなかったな……と思う。
今、伯母に「よく旅行へ行ったよね」と話しかけても「憶えてないんよ」。「その時の写真見る?」と尋ねても「見んでかまわん」と答える。そんな姿を思い出し、私は写真を処分しつつ、見返しては泣いた。何度も手を止めながら捨てる過程は、想像以上に心が消耗するものだった。