理解していない医師が多いという問題も
小島 ここ数年、「発達障害」という言葉をよく耳にしますよね。そんななか私も2018年、インターネット上の連載記事で自分がADHD(注意欠如・多動性障害)であることを公表しました。発達障害という言葉を雑に使っている人があまりにも多いと感じたからです。
沖田 私は漫画で自分の発達障害のことを描いてきましたが、最近はメディアで障害について話してほしいと依頼されることも増えてきました。
岩波 そもそも「発達障害」というのは診断名ではなく総称です。ところがテレビ番組にコメントを求められた時、打ち合わせの際にASD(自閉症スペクトラム障害)とADHDは違うものだと申し上げると、「視聴者がわからなくなるから一緒に扱います」と言われたことがありました。
小島 発達障害という言葉が浸透したのはいいけれど、否定的に使ったり、逆に自分の才能をアピールするために使ったり──。だからこそ、当事者の立場で気になることを書いてみたのですが、かなりの反響がありました。
岩波 現在は、ASDに含まれるアスペルガー症候群という病名が過剰に浸透した結果、「空気が読めない人=アスペルガー」と決めつけられて、本人も周りも「アスペルガーなのではないか」と見なしてしまう雰囲気が強くなっていると感じますね。しかし、この点を理解していない現場の医師が多いという医療側の問題もあります。
沖田 そうなんですか!?
岩波 僕が医学部を卒業した30年ほど前には、発達障害に関する教育はほとんど行われていませんでした。扱っていたのは、知的障害を伴う重度の自閉症くらいです。でも現在、発達障害かも、と病院に来られる方のほとんどは、知的障害はないし、普通に社会で活躍されている。ですから、医師自身が認識をアップデートしなくてはいけないのです。
小島 障害の種類はもちろんですが、人によって障害の程度も違うということも、まとめて知る機会があればいいのにと思います。