俵屋吉富「藤の花」

香り高く優美な
初夏の代表花、
高貴な紫色のすがたを
二種の趣向で

この季節、山々の新緑に混じって艶やかに咲く藤は「藤波」と喩えられ、万葉の昔から日本人に親しまれてきた花です。京都では宇治の平等院の藤が、さらにお隣の奈良では春日大社の藤も神々しくて有名ですが、街を歩いていてもそこここの庭や公園などで見られる親しみやすい花でもあります。

俵屋吉富小川店では、一年を通して季節の干菓子をガラスケースに並べており、訪れた人はその中から好きな菓子を選ぶことができます。この季節には藤も加わり、花の形をきっちりと模った打物と、葉と花の色だけを表す方形の押物切出があり、具象と抽象の対照的な美しさを楽しむことができます。

淡い藤色の打物は和三盆を使って繊細に、押物は寒梅粉(蒸した餅米を乾燥させた粉末)を使いザングリとした質感に仕上げてあります。食感は異なりながら、いずれも口に入れるとスッと溶けてゆく、お抹茶と合わせたい上品な菓子です。