「動きが無いぶん、表情とセリフだけでお客様に想像してもらえることがリーディングの面白さだと思って、日々稽古をしています」(撮影:本社写真部)
16歳で女優デビューし、文学座演劇研究所に入団。26歳でダウンタウン浜田雅功さんと結婚、2人のお子さんを出産後は舞台から一時離れていた小川菜摘さん。子育てが一段落した50歳で舞台へ復帰したときは苦労もあったとか。その後も精力的に舞台に立ち、今年の9月にはYOUさん、藤井隆さんらとともにリーディングアクト作品『ドウキの…』に出演する。舞台への意気込みや、コロナ禍での過ごし方について聞いた。(構成=岡宗真由子 撮影=本社写真部)

台本を持つ高さにも気を使う

今回の舞台、「リーディングアクト」は朗読劇の一種で、台本を手に演じます。朗読劇にもいろんな種類があって、台本を見ながらやるもの、台本があっても見ないでやるものや、動きをつけるもの、ないものもあります。いずれにしても、通常の舞台と違った緊張感があるんです。

衣装やセットも変わらないことがほとんどなので、お客様の集中を切らさないため、演じる側も一瞬たりとも気を抜けません。通常のお芝居だと、セットをチェンジする暗転の時は、お客さんも演じる側も一息ついたりできますが、それもないことが多い。お客さんの目が役者だけに集中しているので、足を組み替えるタイミングひとつとっても、気を使います。

細かいことを言えば、台本を持つ高さ。客席の位置によっては顔が隠れてしまったりするからです。そのあたりを注意しながら、姿勢を保つことも大事だったりします。動きが無いぶん、表情とセリフだけでお客様に想像してもらえることがリーディングの面白さだと思って、日々稽古をしています。

 

ブランクからの復帰で自己嫌悪に

私は、50歳の時、次男が19歳になったタイミングで「劇団500歳の会」で舞台に復帰しました。「劇団500歳の会」とは、渡辺いっけいさん、宇梶剛士さん、山西惇さん、池田成志さん、深沢敦さん、中村まことさん、千葉雅子さん、金井良信さん、荒谷清水さんと私という、50歳を迎える10人の俳優で結成した劇団。2012年に本多劇場で『いつか見た男達~ジェネシス~』で旗揚げをしました。

錚々たるメンバーの中、私のブランクは20年以上。稽古初日には吐いてしまうくらい緊張して。「このまま私が入っていたら足を引っ張ってしまう。降板したほうがいいのかもしれない」と自己嫌悪になったり……。