9月10~ 16日は「自殺予防週間」です。2020年に自殺した小中高生は、過去最多の499人にのぼりました(注1)。夏休みが明ける8月の人数は65人と、前年の同じ月の約2倍となっています。 2年以上続くコロナ禍で、入学式や卒業式、修学旅行や運動会など、多くの行事が中止や延期となり、リモートで授業が行われた時期もありました。また、経済的に影響を受けた家庭も少なくなく、子どもたちのストレスも増加傾向にあります。長年いじめの問題に向き合ってきた教育評論家のふじもりたけしさんは「子どもに広がるコロナの感染が、いじめに利用される兆候もある」といいます。コロナ禍の学校の状況について寄稿いただきました。
コロナがいじめに利用される恐れ
学校では2学期が始まりました。デルタ株は、子どもから感染した親が死亡するという今までにない症例が報告され、ワクチンに守られていない子育て世代にとって、これまでとは次元の異なる事態となりました。関係各方面の手探りしながらの努力が功を奏することを祈ります。
いじめ問題に関わってきた筆者としてもう一つの気がかりは、夏以前にくらべて格段に広がりつつある子どものコロナ感染が、いじめに利用されることです。
すでにその兆候はあります。
夏休みが短くなっている今日この頃、8月20日あたりから2学期が始まるという地域もあります。そういった地域では8月中から子どもたちの感染が思いのほか広がっています。そんな学校のある学級で一人の子どものコロナ陽性がわかりました。保健所からその日に「濃厚接触者を検査します」と電話がありましたが、業務逼迫のためか、数日たっても音沙汰がありません。保護者の間では、誰がどこで接触したのか? と疑心暗鬼が広がり、捜査さながらにその子どもの動きを丸裸にしようとする動きもうまれました。その家庭は孤立し、憔悴します。「こんなことだったら、全員にすぐPCR検査をしてくれればいいのに」と幾人かの親はつぶやきました(注2)。
こんな話も聞きました。
地方にいけばいくほど、子どもや親が具合悪くなったとき、「発熱外来などで検査を受けたくない。自宅に検査に来てほしい」という声が聞かれるようになるというのです。狭い地域社会でPCR検査を受けただけで「あの家は…」となるのを避けたいという気持ちはわかります。