孤独死に備えるべきなのは、後を託す子がいない人ばかりではありません。超高齢社会では、子どもや甥、姪に先立たれることもありえます。身内がいなくなったら、死後の事務手続きや葬儀の手配を誰にお願いすればよいのでしょうか。自身の最期と没後について今から考えておくべきことを、2回に分けて終活研究の第一人者である小谷みどりさんが解説します。第1回は生前に結べる「任意後見契約」「任意代理契約」「死後事務委任契約」をどう使い分けたらいいのか、そして費用はどのくらいなのか、を教えてもらいました。

ひとりで死ぬ人が増えていく

私は終活に関する講演をよく行っていますが、そこで参加者のみなさんが口にされるのは、「認知症になったらどうしよう」「孤独死が心配」「死んだ後の手続きを頼める人がいない」といった不安の数々。家族が同居していない場合、そういった心配はより多くなるようです。

近年、かつてない勢いでひとり暮らしの高齢者が増え続けています。国立社会保障・人口問題研究所の2018年推計によれば、2040年に65歳以上の女性の独居率は24.5%になると予想されています。高齢女性のほぼ4人に1人は、ひとり暮らしをすることになるのです。

既婚女性にとっても、独居は他人事ではありません。1990年に離婚時の年金分割制度が始まった途端、50歳以上の離婚者が急増し、今も多いまま。離婚はしなくても、配偶者を先に亡くすことはあります。

また、50歳の時点で一度も結婚したことがない人の割合を示す「生涯未婚率」も増加中です。男性は05年の15.96%から、15年には23.37%に急増。女性は7.25%から14.06%に倍増しています。

家族はいなくても友人など人とのつながりがあればよいでしょう。ですが、特に男性は、社会との関わりが少ない傾向が強いため心配です。

最近では女性も定年まで働く人が増えていますが、職場での人間関係は退職と同時に途切れてしまいます。働いていると友達が多いような気がしていても、職場を離れてからその交流が続くかどうかは疑問です。

加えて、少子化で子どもや甥、姪など、年下の親族の数は少なくなる一方。また、自身が長生きするほど、親戚が亡くなったり、子どもに先立たれたりする可能性も高まっていく。気がつけば“おひとりさま”になっていて、自分の老後や死後を託す人が周りにいないという状態は、誰にでも起こりうることなのです。

今後は、こうした単身高齢者が次々とひとりで亡くなっていきます。誰も経験したことのない社会の超高齢化は確実に進行しているのです。

ひとり暮らしであろうとなかろうと、親族に看取りや見送りを頼めないために、生前からその算段をつけておきたいと願う人も多いはず。「ひとり死」への備えを以下、心構えも交えてご紹介していきましょう。