諸外国では7割、日本は2割
日本には、親の病気や失踪、離婚や虐待などさまざまな事情により親と暮らせない子が約4万5000人いる。その約8割が暮らすのは乳児院や児童養護施設だ。社会的養護を必要とする子どもたちを家庭的な温かい雰囲気の中で育てるため、厚生労働省は児童福祉法に基づいて里親制度を定め、里親になる人を増やす活動を推進している。その背景には、諸外国では7割近くの子どもが里親の下で育てられているのに、日本はわずか2割という実態があるからだ。
現在、里親として子どもを受け入れているのは4000世帯ほど。里子を預かり育てる人たちは、里子とどのように向き合っているのだろうか。
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都内の自宅で養育里親として22年、30人以上の子どもたちを育ててきたのが青葉紘宇(こうう)さん(77歳)・やよいさん(71歳)夫妻だ。紘宇さんは以前、少年院、児童相談所(以下、児相)の職員をしていた。
里親というと、養子縁組で親子になることを目的とする里親を想像するが、青葉さんのように親が育てられない要保護児童を一定期間預かり、家庭で養育する「養育里親」もいる。養育里親が子どもを預かる期間は、数日から最長で18歳になるまで。その間、国や自治体からは里親手当(子ども1人につき1ヵ月9万円)や一般生活費などが支給される。
最初の里子のK君は、1999年、小学5年生でやってきた。それまで6ヵ所の施設を転々とし、育てにくい子と評判で、児相から相談を受けた紘宇さんが預かることになったのだ。やよいさんは、最初戸惑ったという。青葉家の2人の息子はもう成人しており、子育ては久しぶり。血のつながらない子とうまくやっていけるだろうか、と。
K君は最初のうちこそおとなしくしていたが、次第に横暴な振る舞いが目立つようになっていく。息子の部屋を引っかき回す、お金を持ち出すなど、次々と問題行動を起こした。
「一緒に住んでいた次男が、〈あいつは全身から周囲をムカつかせるオーラが出ているよ〉と言うほど荒れていました。そのうちに、夜になると街を徘徊する、お菓子を万引きする、自転車を盗む――。そんなことが重なって、もう家では面倒見きれなくなりました」