2021年、東京・中央区にオープンして話題となった「分身ロボットカフェ」。ロボットを操作するのは、難病患者や障害などの理由で外出が困難な人たちだという。そこで働くロボットの研究・開発者である吉藤健太朗(よしふじ・けんたろう)さんに話を聞いた(取材・文=古川美穂 撮影=本社写真部)
<前編よりつづく>
実現させた親友との夢
社会参加を可能にする遠隔操作型ロボット「オリヒメ」を開発したのは、吉藤オリィこと吉藤健太朗さん(33歳)。オリィの愛称は趣味の折り紙から。吉藤さんは体調不良をきっかけに小学5年から中学2年まで不登校となった。10代で味わった深い孤独の体験が、発明の原点だという。
「何もせず天井を眺め続けた3年半は本当につらいものでした。居場所がなく、自信もなく無気力で、記憶力も低下し、一時は言葉をうまく聞き取れなくなった。不登校の頃に分身ロボットがあったら、それで学校に通い、友達関係や自分の居場所を作れたかもしれない。その気持ちが私のロボット開発者としての出発点です」と吉藤さんは言う。
もともとモノづくりが大好きで、工業高校から高専、早稲田大学の創造理工学部へと進む。高校時代から電動車椅子の新機構の発明に関わり、世界最大の高校生科学大会「Intel ISEF」でグランドアワード3位になるなど実績を重ねてきた。
大学時代に一人で「オリィ研究室」を立ち上げ、22歳の時に作った分身ロボットを世に出す。そのロボットを自分の愛称であるオリィと、遠く離れて会いたい人に会えない七夕伝説から「オリヒメ」と名付けた。