20〜30代で出席した同窓会は、働き方や結婚の時期、子どもの有無や進学先の違いで話が嚙み合わないもどかしさがあった。しかし、酸いも甘いも嚙み分けた中高年の同窓会には、また違った味わいや喜びがある。その出会いや再会が、人生の新しい局面への扉を開くことも──4人の女性の体験談を聞いた

 

~水野さんの場合~

「尽くして当然」の嫁ぎ先を離れて

「同窓会が直接のきっかけではありませんが、離婚への大きな後押しになったのは確かですね」

と、水野英子さん(53歳、仮名=以下同)は語る。東京都出身の水野さんが、九州の地方都市で手広く商売を営む家の長男と結婚したのは25歳のとき。幼い頃に両親が離婚した水野さんにとって、「義父母を中心に家族が協力して店を切り盛りする暮らしや、跡取りとしてがんばる彼が、とても魅力的に思えたんです」。

しかし嫁いで間もなく、夫のDVが始まる。姑との確執、不景気のあおりで傾き始めた家業の立て直しなど、昼のメロドラマか韓国ドラマかという苦労が水野さんに襲いかかる。

「いま考えれば、なぜもっと早く逃げ出さなかったのかと思います。でも女は男に従うもの、嫁ぎ先に尽くして当然という気風の土地に住み、周囲に相談できる人もいない私は、『逃げたいと思う自分が間違っている』と思い込んでいたのです」

それでも、忙しい合間をぬって取得した介護ヘルパーの資格で、「もしかしたら自立できるかも」という希望を抱き始めた水野さん。そこへ舞い込んだのが、2012年秋に、東京の出身中学で同窓会が計画されているという知らせだった。

「その知らせが心のどこかに引っかかっていたのでしょう。同窓会まであと3ヵ月というある日、『もう限界!』と思い、段ボール7箱分の荷物を東京の母の家に送ると、わずかな貯金と年老いた柴犬といっしょに、新幹線に飛び乗ったんです」

そうまでしても夫や姑は、「そのうち戻ってくるだろう」とたかをくくっていたそうだ。実際、水野さんの心も、揺れ動いていた。

「でも11月の同窓会で、東京で働くクラスメートや円満な結婚生活を送る人たちと話すうちに、『私の感覚は間違っていなかった。逃げてよかったんだ』という確信が持てました」

特にその場で、自分のつらい経験を話したわけではない。けれども懐かしい思い出話に花を咲かせ、たわいない冗談に笑い転げるなかで「心がほぐれて、軽くなっていくのが感じられました」と水野さん。

そうして同窓会からほどなく離婚届を提出。東京で仕事を見つけ、働きながら社会福祉士の資格も取得して、現在は知的障害者の施設で入居者たちと無農薬野菜づくりに励んでいる。

そんなふうに人生を大転換するきっかけをくれた同級生たちとは、「趣味の山登りに行ったり、一緒にお花見をしたり。50代になって、再びこんな素敵な友だちづき合いができるとは思ってもみませんでした」。