夕飯後のおしゃべりがこんなに幸せなんて
その気持ちに押されて、結婚を決意。1年前に再婚してからも、汐見さんは舞台があるときは東京の自宅を拠点にし、神奈川の新居と行ったり来たりの生活。彼は、忙しい診療の合間に舞台へ駆けつけてくれるという。
「芝居が終わって待ち合わせ場所へ行くと、『汗をかいたでしょ』と冷たいオレンジジュースをすっと出してくれる。そういう気づかいが、私にはダイヤモンドより嬉しいの(笑)」
前夫は7歳年上の戦前生まれ。頼りがいはあるものの、情愛を言葉や態度で示すタイプではなかった。
「性格の違いもあるのでしょうが、同い年の気楽さや価値観がいっしょであることの喜びは、想像以上。夕食後にテレビを観ながらおしゃべりすることが、こんなに幸せなんてね」 と、明るくのろける汐見さん。
再婚に反対だった友人たちも「あなた方のせいで今年も猛暑よ!」と呆れるほど、幸せいっぱいの毎日を送っている。
2年間、役員を務めたことで
同窓会の運営を引き受けたことが新しい生活へのきっかけにつながった、と語るのが、漆原貴子さん(58歳)だ。出身校であるミッション系の女子大には、戦前から続くOG会があり、同窓会誌の発行や、卒業生たちが母校に集うホームカミングデーの企画・運営を担っている。
ホームカミングデー当日のこまごました仕事を担う幹事は、東京近郊に住む卒業生の間で順番に回ってくるため、10年に一度ほど引き受けてきたという。
「仕事もさほど多くありませんでしたし、会合の後でお友だちとお昼を食べるのが楽しみで(笑)」
そんな漆原さんが、同窓会の執行部役員を打診されたのが3年前。任期は2年で、1年目は先輩役員について仕事を覚え、次の年には実際に会の準備や催し物の企画、各方面への寄付のお願いなど、実に多方面の仕事をこなさなければならない。
「活動は週に2日ほどで、本番が近づけば仕事はますます増える。夕食をとりながら思わず居眠りしていると、口の悪い大学生の長男に『一文にもならないのに物好きだよね』と呆れられたものでした(笑)」
執行部には、30代から、上は60代の役員まで、あらゆる年代の女性たちが集う。子育てや介護に追われ、あるいはフルタイムで働きながら、役員会に駆けつけてくる同窓生たち。
「時代は違っても、キャンパスという同じ空間で青春を過ごした思い出が、こんなにも温かく強いきずなを結んでいるんだなって。自分もその一員であることが、とても誇らしくなりました」。