〈治療〉安静にすることが一番の治療
病院にたどり着く前に亡くなった方の場合は、死因を特定することができませんが、一般的に心筋梗塞と診断された人の1%程度がたこつぼ型心筋症といわれています。重症のケースでは、突然死することもある病気です。
まずは狭心症や心筋梗塞との鑑別を最優先に行います。心電図や血液検査では、心筋梗塞とほぼ同じ症状。しかし、心臓超音波(エコー)検査をすると、左心室の先端部が広範囲に収縮低下していることがわかります。「ほぼ心筋梗塞だろう」と思っていても、その収縮低下の原因を調べるために「冠動脈造影検査」を行って確定しなければなりません。
冠動脈造影検査は、肘や手首などの動脈から特殊な細い管(カテーテル)を冠動脈の入り口まで挿入。そして、カテーテルの先端から造影剤を注入してX線撮影すると、冠動脈は正常ですが、その後に行う左心室造影では、収縮期(心臓が縮んでいるとき)に左心室がたこつぼ型になっているのがはっきりとわかります。また、拡張期(心臓が広がっているとき)はむしろ過度に丸くなっていて、画像でここまで明確に診断がつく病気も珍しいといえます。
たこつぼ型心筋症と確定診断がついたら、心臓の動きを悪化させている負担を取り除くのが最も大事。それには入院して安静にすることです。1~4週間程度安静入院するだけで、この病気は自然に改善することが多いのです。もちろん、患者さんの状態を診ながら対症療法も行います。心不全状態の治療、加えて低血圧状態であれば、血圧を上げる昇圧薬を投与し、冠動脈に動脈硬化がある場合は血液を固まりにくくするアスピリンを投与。これに加えて、心理療法士がカウンセリングで患者さんの心のケアを行うケースもあります。