2022年2月24日から始まった、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻。8ヵ月が経った10月26日時点でいまだ収束の兆しが見えず、プーチン大統領はウクライナ東部・南部の4州の「併合」や「戒厳令」を宣言し、攻撃が続く地域では市民の犠牲が相次いでいる。侵攻から約5ヵ月がすぎた7・8月に、紛争地取材を続けてきたジャーナリストが現地の声を取材した。
「住宅地が狙われるなんて」
私はこれまでアフガニスタンやイラク、シリアなどの戦場や紛争地を取材してきた。戦争で被害を受けるのはいつも、力のない市民、とりわけ女性や子どもだ。いまウクライナで広がる戦火。人びとはどんな状況にあるのか、その思いは――。私は現地に向かった。
黒海沿いの保養地、ウクライナ南部のセルヒーフカ。7月1日深夜、この町に突然、爆発音が響き渡った。ロシア軍のミサイルが9階建てのアパートと、そのそばにあった保養施設に相次いで命中したのだ。22人が犠牲となり、40人に及ぶ負傷者が出る惨事となった。
アパートの1階に暮らす主婦のリュドミラ・チェバンさん(43歳)は、4歳の息子・サーシャちゃんを寝かしつけたところだった。炸裂したミサイルは、壁と窓ガラスを粉々に吹き飛ばした。壁の下敷きとなった2人は、駆け付けた隣人と救助隊に助け出された。
お腹には8ヵ月の子がいたが、幸いにも無事だった。別居中の夫は、17歳の長女と別の棟に住んでいて、難を逃れた。息子とよく遊んでくれた上階の高齢女性が亡くなったのが無念でならないという。