立川談春さん(右)と酒井順子さん(左)(撮影:洞澤佐智子)
17歳で立川談志さんに弟子入りし、古典落語の名手といわれる立川談春さん。変化の激しいこのご時世に何を思い、落語の灯を繫いでいるのでしょうか。大の落語好きで、長年の知人でもある酒井順子さんと深く語り合いました(構成=篠藤ゆり 撮影=洞澤佐智子)

<前編よりつづく

落語にとって試練の時代

酒井 私たち、同い年ですよね。

談春 そう。同じ時代の空気を吸ってきた。で、今ピンチなんです。

酒井 えっ、どうしてですか?

談春 知り合いのところの20歳のお嬢さんが、「男なんて面倒くさいからいらない。ひとりで生きていく」って言うんです。

酒井 結婚しなくてもいいと考える若い人が増えていますね。年代を問わず、離婚も多いですし。

談春 僕は高校2年の時、立川談志の「芝浜」を聞いて衝撃を受けて、高校辞めて弟子入りした。飲んだくれて働かない男が、女房のおかげで心を入れ替えて真人間になる。夫婦の情愛を描いた「芝浜」みたいな噺が、成立しない時代になっちまったんじゃないかな。

酒井 つまり、落語そのものがピンチというわけですね。

談春 子どもたちに伝統芸能に触れる機会を、ということで学校寄席というのをやってるんだけど。でも、「ご隠居さんがいて八っつぁんとしゃべる話はしないでください」って言われるの。

酒井 なぜでしょう。