シラス漁で有名な静岡市用宗。渡部篤郞さん演じる関口氏純と深い関係が(写真提供:Photo AC)

松本潤さん演じる徳川家康がいかに戦国の世を生き抜き、天下統一を成し遂げたのかを古沢良太さんの脚本で巧みに描くNHK大河ドラマ『どうする家康』(総合、日曜午後8時ほか)。第6話で、今川氏真(溝端淳平さん)より「降伏しなければ瀬名(有村架純さん)たちを皆殺しにする」と通達された元康(松本さん)。追いつめられた元康は、一度は失敗した本多正信(松山ケンイチさん)から提案された「今川家重臣を生け捕りにし、瀬名たちと人質交換する」という策にすべてを託し――といった話が展開しました。

一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生が気になるあのシーンをプレイバック、解説するのが本連載。第25回は「フィクション回に秘められた意味」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし!

そもそも「人質」とは

現代ではありませんが、前近代には「連座」という考え方がありました。悪いことをした人がいたら、連帯責任として、その人の関係者までを罰するのです。

罪に問われる関係者というのは職務上の上司や仲間であることもありましたが、たいていは家族ですね。血縁者が捲きこまれた場合、これはとくに「縁座」という言い方もしました。日本の古い法令である律令に、細かな規定があります。

人質というのは、連座・縁座の視点からも捉えることができそうです。

私はあなたに従属します。絶対に裏切りません。その忠誠の証として、母なり、妻なり、子どもなり。私の大切な家族を人質として差し出します。私が裏切るようなことを万が一した暁には、そのときはどうぞ、私の大切な人々を煮るなり焼くなりして下さい――。

これが人質です。