2023年2月24日(金)、第30回読売演劇大賞贈賞式が東京・帝国ホテル「孔雀の間」で行われた。国内で上演された、全ての演劇から最もすぐれた作品、個人を顕彰する。
開式にあたり、会場全員が起立して高円宮妃久子殿下をお迎えした後、お言葉を頂戴した。「国内外において、戦火や紛争、自然災害、物価の高騰、苦しんでいる方が多くいらっしゃることに心が痛みます。演劇関係者は、この事実を語り続けていく立場になるかもしれません。世界に目を向け、国内でも日の当たらないところに注目して、社会に訴え続けていただければと存じます」と、祝賀とともに演劇が担う未来への希望を語られた。
その後、贈賞式が始まり受賞者が登壇。ブロンズ像「蒼穹」を手渡され、それぞれ受賞のスピーチを行う。
年間に活躍した新人を対象に贈られる杉村春子賞の受賞者は大原櫻子さん(27)。『ミネオラ・ツインズ』の双子の姉妹役、『ザ・ウェルキン』のサリー役が評価された。桜色のドレスに身を包んだ大原さんは、昨年受賞者であり、『ザ・ウェルキン』の共演者でもある那須凜さんからブロンズ像を手渡され、目に涙を浮かべながら抱きしめ合う。
那須さんからの、「櫻子にブロンズ像を渡すことができたら、と話していました。今目の前にいてくれること、涙が出るほど嬉しいです」という言葉を受け、大原さんはスピーチの冒頭で、「(泣いてしまうか心配していたが)凛さんのお話を聞いたら、思った通り泣いてしまいました」と那須さんへの感謝を表した。
続けて、「寒波が到来する中で賞の知らせを受けましたが、私の心には温かな春風が吹くようでした。この度は、栄えある賞をいただいたこと、また関係者の皆さまに、心から改めて感謝を申し上げます」と、目に涙を浮かべながらお礼を述べた後、支えてくれた家族への思いをコメント。
「そして、個人事務所の経営者でもある両親。5年前、突然事務所を立ち上げることになったにも関わらず、必死に支えてくれてありがとう。両親は、私に言葉を教えるより先に、演劇をたくさん見せてくれました。『今は分からなくてもいいから見ておきなさい』という父の言葉が、子どもの頃から女優になりたいという、私の夢を育んでくれたと思います。春風が吹いて、桜はまだつぼみをつけ始めたばかり。この賞を胸に、自分で選んだ道を歩み、満開の花を咲かせ続ける役者を目指したいです」