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不意に襲ってくる頭の痛み。我慢してやり過ごしたり、薬に頼ってみたり、その場しのぎの対処で済ませている人が多いのでは?頭痛は正しいセルフケアをすれば、痛みそのものも頻度も減らすことができます。頭痛専門医に聞いた、具体的な方法を紹介します(構成=渡部真里代 取材・文=佐藤ゆかり イラスト=おおの麻里)
ストレスが招く緊張型頭痛、セロトニンが鍵になる片頭痛
「頭痛を抱えている女性は非常に多い」と話すのは、頭痛専門医の五十嵐久佳先生です。頭痛にはさまざまな種類がありますが、日常的に起こる代表的なものに「緊張型頭痛」と「片頭痛」があると言います。
「緊張型頭痛を経験している人はおよそ2200万人おり、女性は男性の1.5倍。次に多いのが片頭痛で患者数はおよそ840万人、女性は男性の3.6倍と推定されています」(五十嵐先生。以下同)
緊張型頭痛の特徴は、頭がしめつけられるように痛むこと。最大の原因は、心身にかかるストレスで引き起こされる首や肩の筋肉の緊張です。
「筋肉が緊張して血流が悪化すると、疲労物質が溜まり、筋肉が固まって『コリ』の状態に。首や肩の筋肉は後頭部の筋肉とつながっているため、頭全体に痛みが広がるのです。緊張型頭痛がほぼ毎日続く人は、痛みを調節する脳の機能がうまく働かなくなるとも考えられています」
一方、片頭痛の特徴は強い痛みが起こること。キラキラした閃光が見えたり、生あくびが出るなど、痛み出す直前に前ぶれがある場合もあります。原因は、強い光や音、寝不足、寝すぎ、人混み、ストレス、低気圧、空腹、アルコールなど、人によってさまざま。
これらが片頭痛を引き起こすメカニズムは解明されていませんが、精神を安定させる働きがある脳内物質・セロトニンや、その他の神経伝達物質の関与が指摘されていると言います。
「何らかの誘因で脳の視床下部が刺激されることにより、片頭痛発作がスタートすると考えられています。セロトニンの不足などがきっかけで、頭部の大部分の感覚をつかさどる三叉神経に刺激が伝達。すると、三叉神経末梢から神経伝達物質が放出されて血管の周りに炎症が起こり、血管が拡張します。その刺激が脳に伝わり、頭痛を引き起こすと考えられています」
また、女性ホルモンの一つであるエストロゲンの量が急激に変動することも強力な誘発因子。月経や排卵日周辺、更年期は症状が悪化しやすいそうです。
「特に母親や祖母が片頭痛持ちの人は注意してください。片頭痛は遺伝的要素もあり、環境変化やホルモンの変動などに対して脳が敏感に反応する体質に誘発因子が重なると、発作が起きやすくなるのです」