フルタイム勤務と両立しながら、自宅で母親の介護をすることを決めたあけみさん(56歳)でしたが――(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
厚生労働省の発表によれば男性の平均寿命は81.47年、女性の平均寿命は87.57年(2022年度)と、いずれも40年前から9歳程度伸びています。一方、介護保険制度における要介護又は要支援の認定を受ける人の数も増え、2018年度末で645.3万人に。この数は2009年度末(469.6万人)から175.6万人増えており、当然、その中には認知症の人も含まれていると予想されます。19年に渡って認知症の母親を在宅介護してきたフリーアナウンサー・社会福祉士の岩佐まりさんが、フルタイム勤務と両立しながら、同じく自宅で母親の介護をするあけみさん(56歳)に話を聞きました。

胃ろうとバルーン装着の母を家に連れて帰る

コロナが広がり始めた頃、その影響で、徐々にお母さんと会うのが難しくなっていました。

代わりに、受付の人が私の声を覚えるくらい毎日電話して、お母さんの様子を聞いていました。2人部屋だったから相部屋の人に迷惑をかけていないか心配したんですが、大声をあげることはあまりないという話でしたね。

それはよかったんですけど、オンラインでの面会もなく、お母さんの様子はわからない。

どうなってるんだろうと心配していたら、年末だったかな、急に主治医の先生が「特別に面会を許可します。いつ来てくださってもいいです」と言うんですよ。

何だろうと思って病院に行ったら、お母さんが急激に弱っていて、もはや何があるかわからない、だから許可したんだと言うんですね。

会いに行くと、お母さんは本当に衰弱していて、痩せこけていました。膝も、「拘縮」というんですが、曲がったまま固まってしまっていて……小柄なお母さんが、ますます小さくなってしまっていました。

あと、このときはじめて、お母さんが導尿のためのバルーン(尿を排出させるために、尿道から膀胱へ挿入するチューブのこと)を着けているのにも気付きました。装着について、特に病院からの連絡はなかったんです。精神科にいたときに着けたのかもしれません。

入院してから3か月も治療をしていなかったので、お医者さんからは、療養型の病院に移るか、施設を探すかしてほしいと言われました。ただ、今はコロナがあるから、もし療養型の病院に移ったら、お母さんの年齢を考えると、二度と会えない覚悟が必要だとも言われました。

それを聞いて私は、お医者さんに言いました。

「お母さんを家に連れて帰ります」

そう、家で看ることを決めたんです。胃ろうは、やり方を勉強すれば家でも介護できるからです。