最後まで、家で一緒にいたい

病院から家に戻ってきた頃は、まだ言葉が出ていたんですよ。顔を拭いてあげると、「ああ、気持ちいい」とか言ってくれて。私の名前も呼んでくれました。でも、それも最近はなかなか……。今はもう、昔のお母さんではないし、夜中に叫ばれるとイライラすることもあります。

それでも、静かにしていると、やっぱり私のお母さんなんです。今日も、「おかあちゃん、わかる?」って聞いたら、何も言わないけど、目を開けて少し笑ってくれた気がするんです。 

猫ちゃんを飼っていて、それが癒しだったんですけど、少し前に20歳と9か月で亡くなってしまいました。父も昨年亡くなりました。だから、肉親はお母さんだけです。お母さんがいなくなったら、私はひとりぼっちです。

施設に預けたほうがいいことはわかっています。でも、そうしたら私はひとりぼっちになってしまう。

大事に育ててもらった恩返しでもあるし、私が寂しいのもあるし……。なんなんでしょうね。

お母さんが昔よく、私が生まれたときの話をしてくれたんです。どれだけ嬉しかったかと。そういうことを思い出すと、なんでしょうね、やっぱり最後まで一緒にいたい……。

それだけです。

写真は著者である岩佐まりさん(左)と岩佐さんが介護をしているお母さん(写真提供◎著者)