日本人審判が女子ワールドカップで快挙達成!2023年7月20日にサッカー女子W杯が開幕。オーストラリアとニュージーランドの共同開催で行われる。開幕戦は、ニュージーランド対ノルウェー戦。山下良美主審、坊薗真琴副審、手代木直美副審の日本人審判員が審判を担当した。日本人がW杯の開幕戦を担当するのは、2014年のブラジル大会(西村雄一主審、相樂亨副審、名木利幸副審)以来で、女子では初だ。この試合でニュージーランドへのPKの判定がVARで検証されることに。検証の末、山下主審はPKを指示し、このVAR判定をマイクを通し「オンフィールドレビューの結果、判定はペナルティ(キック)!」と英語でスタジアムに説明していた。山下さんが、審判への思いを語ったインタビューを再配信します。
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2022年11月、日本のみならず世界中を熱狂させたサッカー・FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会。選手たちの活躍に加え、大きな話題になった人物がいる。W杯史上初の女性審判の1人に選ばれた山下良美さんだ。まだ圧倒的に男性社会といえるサッカー界で、女性が審判を務める意義とは(構成=田中有 撮影=宮崎貢司)体の芯まで伝わってきた熱気
――スタジアムのフィールドに足を踏み入れたとき、私はこれまで経験したことのない感覚に包まれました。2022年11月23日(日本時間24日)、W杯カタール大会1次リーグ、ベルギー対カナダ戦。第4の審判員として参加した最初の試合です。
その瞬間、遠い観客席でサポーターが叫んでいる声、人いきれやにおい、うねりの振動、演出で吹きあがった炎が巻き起こす熱風までもが、肌を通って体の芯まで伝わってきたのです。
山下さんは4歳からサッカーを始め、小、中、大学、さらに社会人チームでもプレーを続けた。選手として活動する傍ら、大学4年の頃、先輩に審判をやってみないかと誘われた。
軽い気持ちで4級から順に資格を取っていき、12年に女子のトップリーグで笛を吹ける女子1級を取得。さらに15年には国際審判員に登録され、女子のアンダー世代のW杯やアジアのプロクラブが闘うAFCカップなど国際試合で経験を積んできた。
19年には男子のプロリーグを担当できる1級審判員となる。以来、JリーグやAFCアジアチャンピオンズリーグで、男子プロ選手を相手に「女性初の主審」としてピッチに立ってきた。
22年5月、W杯カタール大会で史上初の女性主審3人のうちの1人に選出される。同年8月からは日本サッカー協会(JFA)のプロフェッショナルレフェリー(PR)として活動している。もちろん女性初である。
――今回のW杯で、私は1次リーグの6試合に第4の審判員として出場しました。サッカーの試合はピッチで笛を吹く主審、両サイドで旗を持って走り主にオフサイドの判定をする副審2人と、第4審の計4人が中心となってジャッジしていきます。
第4審の仕事は、主審に何かあったときに交代することと、アディショナルタイムの表示や選手の交代のサポートなど。私が数字のボードを掲げる様子は各種メディアにも出ていましたが、あれは業務のほんの一端です。
試合中のほとんどの時間は、フィールド全体を見渡しながら、接触やハンドなどについて、インカムを通してほかの審判とやり取りしています。