チームの雰囲気が変わる

服部が「チームの雰囲気が変わり始めた」と感じたのは、夏合宿の頃だった。4年生が練習で率先して声を出すようになり、選抜メンバーだけでなく、全員が集中し始めた。

「4年生が支えてくれたことが大きかった。何と言っても、みんなたすきが途切れた悔しさを持っていたし、チームを何とか再建したいという気持ちは共通していた。最上級生がその覚悟を示してくれたことで、チームが一つにまとまっていった」と服部は感謝する。

30年ぶりの総合優勝のゴールに飛び込んだ10区の谷永雄一(写真:読売新聞写真部)

別府もその変化を肌で感じていた。秋の予選会では、頼みの服部は故障明けで万全ではなかった。だが、一丸となりつつあったチームの雰囲気に「不安は感じなかった」という。

見込み通り、ペースメーカーを務めた服部が集団を引っ張り、全員が底力を発揮してトップ通過。本大会に向けた12年12月の伊豆大島合宿では、道路に波しぶきが飛ぶほどの強風の中で30キロ走を敢行した。

他校が尻込みして練習を控えるほどの悪条件で、箱根を目前に控えた中でも「やり遂げ、影響を引きずらず、むしろ勢いにつなげられる自信があった」と別府は言う。

チームは期待通りに30キロを走り抜いた。「箱根の登録メンバー16人だけでなく全員がいつでも走れる状態。これで優勝できなければ監督を辞める」。そう決意するほどチームの仕上がりに確信を抱いた。

本大会では培った力を発揮する。往路は強烈な向かい風が吹くコンディション。5区を任された服部が東洋大に続く2位でたすきを受け取ると、主将として厳しい状況を乗り越えてきたメンタルの強さを存分に見せつけた。

力強く山を駆け上がり、1分49秒差を逆転して26年ぶりの往路優勝を飾った。全区間で区間賞は服部だけだったが、復路も抜群の安定感で駆け抜け、30年ぶり10度目の総合優勝を果たした。