反骨心から生まれた復活劇

服部は「僕たち選手は日体大の伝統の重みを知っていたし、多くの関係者の期待も肌で感じていた。先輩方がつないできたたすきを途絶えさせるような『あんな悔しい思いはしたくない』という思いが結実したレースだった」と力を込める。

予選会からの総合優勝は1997年の神奈川大以来16年ぶり。前年19位からの頂点は、途中棄権から優勝した神奈川大を除けば、過去にない下克上となった。

別府は、その快挙を振り返って思う。

主な前年からの躍進優勝<『箱根駅伝-襷がつなぐ挑戦』より>

「いろいろ要因はあったと思う。選手が一つの方向を見て、服部を中心にしてまとまったこと。油断や慢心をなくして普段の生活から陸上に集中したこと。でも、やっぱり一番大きかったのは『何くそ』という思いじゃないかと思う。どん底にたたき落とされて、石にしがみついてでも見返してやるぞ、という執念。それが人間にとって一番大きい」。

名門校の復活劇は反骨心から生まれた。

 

※本稿は、『箱根駅伝-襷がつなぐ挑戦』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

【関連記事】
箱根駅伝の名場面、渡辺康幸vs.ステファン・マヤカ。1990年代の「花の2区」を飾った2人、今は監督として一杯酌み交わして
大迫傑、箱根駅伝に4年出場し、プロになって語った〈箱根駅伝の価値観〉。箱根から世界につながるものはあるのか?
「新・山の神」柏原竜二、東洋大を3度の総合優勝に導いて。5区を走るきっかけは、いわき総合高時代にもらった言葉。現在はラジオ番組で後進に「心のたすき」をつなぐ

箱根駅伝-襷がつなぐ挑戦』(著:読売新聞運動部/中央公論新社)

2024年に第100回を迎える箱根駅伝。ライバルたちの熱い競り合い、逆境からの栄冠、番狂わせの力走……胸躍る勝負の歴史をつづる。