日本の眼鏡の95%を生産する福井県で、ゼロからメガネ作りに取り組んだ兄弟と、 二人を支え続けた妻の物語を描いた映画『おしょりん』が11月3日から全国公開されます(福井県では10月20日から先行上映中)。本作で、メガネ作りに情熱を燃やした兄・増永五左衛門役を演じる小泉孝太郎さんに、作品のことや人生観、結婚観などをうかがいました。(構成◎かわむらあみり)
演じるとき、実在する人物が一番怖い
増永五左衛門役のオファーをいただいた時は、正直、ひるみました。メガネ産業の礎を築かれたこんなに偉大な方を演じるなんて、僕でいいのだろうかと。さらに僕は神奈川県民なので、福井県出身の役者さんがされたほうが地元の方が納得するのではないか、僕が演じるのは失礼に当たるのではないかと、本当に僕にお話が来たのかとマネージャーに確認したほどです。すると、「孝太郎さんに、増永五左衛門役でオファーが来ています」と言われて、これは責任重大だと実感しました。
さまざまな役を演じさせていただく機会がありますが、実在する人物が一番怖いんです。増永五左衛門さんやこの作品の素晴らしさをわかっているからこそのプレッシャーもあったので。僕は増永家を背負わなくてはいけない、日本のメガネのシェア95%である福井県を背負うわけです。
そんな役だからこそ最初は弱気でしたが、お引き受けすると決めてから、実際に福井県へ撮影に行くと、初日から現場では「小泉さん、増永五左衛門さん役でうれしい」とエキストラの方を含めていろいろな福井県の方々がウェルカム状態で受け入れてくださったんですよ。そこで、一気に変わりました、「よし」と。それまではまるでアウェイに行く気持ちでしたから。(笑)
福井県のみなさんがあたたかく迎えてくださり、僕も全身全霊を込めて演じなくてはとスイッチを入れてもらった感じがして。全部の撮影が終わるまでに増永五左衛門役をしっかりと自分の中で完全燃焼させて、公開が終わったところで、みなさんから合格点をもらえるようになりたいと思いました。