「趣里には、〈芸能界には来ちゃダメだよ〉と、小さい頃から言い聞かせてきました。この世界、どんな男がいるかわからないし(笑)」(水谷さん)

娘の誕生が人生の転機となった

松田 豊ちゃんにとって、伊藤蘭さんと結婚してお嬢さんが生まれたことが、大きな転機になったのだと感じました。

水谷 おっしゃる通りです。仕事をしている時は全力投球なんですけど、区切りがつくと、「芸能界は向いていない」「僕の世界はここではない」という気持ちがあって。だからずっと、いつ辞めてもいいと思っていました。

でも38歳の時に娘の趣里が生まれ、変わりました。できる限り、続けたいと考えるようになったんです。お嬢さんは、芸能界には興味がなかったんですか?

松田 うちは嫌がっていました。優作と自分が結びつけられないようにと、すごく気を遣っていたようです。

水谷 趣里には、「芸能界には来ちゃダメだよ」と、小さい頃から言い聞かせてきました。この世界、どんな男がいるかわからないし(笑)。それに天国と地獄を味わわなくてはいけない。みすみす、大事な娘をそんなところに行かせたくなくて。

松田 それでも、役者を目指すようになったわけですよね。

水谷 蘭さんの舞台を、ちっちゃい時から観ていたんです。バレエをやっていたから、ステージに興味があったんでしょうね。怪我でバレエを諦めた後、役者を目指そう、と。僕にはそんな素振りは見せないけれど、蘭さんには相談していたようです。

松田 熱意を持った若者を止められないですよね。自分の若い時を振り返っても……。

水谷 そうですね。ちゃんと彼女なりの世界があるから、親の僕でも立ち入れない。

松田 10月から始まるNHK連続テレビ小説『ブギウギ』の主役を務めるんですものね。

水谷 僕も「子の七光り」と言われないように頑張らなきゃ。(笑)