「好きなことで、生きていく」が肯定された

人生のビジョンに限らず、バブル期は高級ブランド品やゴルフやスノボーといったレジャーが積極的に消費され、上司から勧められたモノを素直に聞き入れて消費していた読者もいるのではないだろうか。

ある意味で、当時の上司は画一化された幸せを送っている身近な例であり、幸せを体現する彼らそのものが、ならって消費を行う理由になっていたのである。しかし、Z世代のなかにはこのような価値観が必ずしも幸せにつながるとは考えない層も存在する。

YouTubeやSNSの普及は、若者に個人事業主や転職の成功例を提示し、終身雇用制度に対して疑問を持つきっかけを与えた(写真提供:Photo AC)

バブル時代の羽振りのよさは陰りを見せ、目先の幸せだけを考慮した場合、大手企業も中小企業も若い間の給与に大きな差はなく、大手企業に入社するメリットは見出しにくくなった。

大企業のなかには就労環境が劣悪な企業もあり、昔の企業戦士のように仕事や企業ブランドに誇りを持って身を粉にして働くことに対しても価値観は大きく変化した。

YouTubeやSNSの普及は、若者に個人事業主や転職の成功例を提示し、終身雇用制度に対して疑問を持つきっかけを与えた。

2011年にはYouTuberのHIKAKINが「HikakinTV」を開設し、当時は楽観的すぎるといわれた「好きなことで、生きていく」という信念は、今や多くのYouTuberやインフルエンサーの成功により肯定された。

就職して、結婚し、家庭を持つという画一化された幸せ以外の、個人が個人の幸せ(やりたいこと)を追求するという価値観も広く浸透している。