VUCAの時代

また、好景気のときはたしかに羽振りのいい上司を見て、自分もこの人のようになりたい、このまま続けていればこの人ぐらい稼げるようになる、といったように、目の前にニンジンがぶら下げられた状態が働くうえでのモチベーションとなっていたのかもしれない。

しかし、この不景気にそこまでの魅力を部下に見せつけることができる上司が減っているということも、仕事に対するモチベーションが昔と違う大きな要因なのかもしれない。

成功や達成が画一化され、イメージが描けていた時代は、なりたい姿(あるべき姿)になるために、今の自分から逆算し、その道筋(理想の自分になるためのプロセス、手段、資格など)をたどることができたが、不確実な時代にあるべき姿は描きにくい。

2010年代に入ると、VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代といわれ、未来を見通すにはあまりにも先行きが不透明になってくる。「あるべき姿」も消滅していき、それぞれが幸せならばいい、それぞれの価値が尊重されればいいという、画一化と相反する多様性が現れるようになったともいえるだろう。

※本稿は、『タイパの経済学』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。


タイパの経済学』(著:廣瀬涼/幻冬舎)

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