今の若者は競争を避けたがっている――(写真提供:photoAC)
90年代の教育改革の結果、運動会からは徒競走や棒倒しがなくなり、勝負や順位をつけないゲームが増えているという実態がかつてNHK『クローズアップ現代』などで報じられ、話題となりました。一方「そういった背景より、もっと根深いところで、今の若者は競争を避けている」と話すのが金沢大学の金間大介先生です。先生いわく「彼らは強制的に差を付けられることをとにかく嫌がる」そうで――。

上司と部下の間にあるギャップとは

結論から申し上げると、現在の若者はとても競争が嫌いだ。

その心理は「今は徒競走に順位とか付けないんだって」といった、いわゆるゆとり教育論で語られるよりも、ずっと根深いところに潜んでいる。

筆者は以前、企業で研究開発に従事する人たちを対象として、上司と部下のモチベーション・ギャップを研究したことがある。上司は「こうすれば(こう言えば)部下たちはやる気を出す」と思っていることが、実は部下にとっては全然興味がなく、むしろドン引く要因だったりする。その差をモチベーション・ギャップと称し、なぜそんなすれ違いが生じてしまうのかについて分析したものだ。

結果の詳細については、論文発表もしているし、拙著『モチベーションの科学』にも掲載しているのでご参照いただきたい。

その研究の中で、いわゆる社長賞といった社内表彰制度も、モチベーション・ギャップが顕在化した1つとして俎上に載った。社長以下のマネジャーサイドは、**賞を設けることで競争意識が芽生え、社内が活性化すると信じていた。