競争しても平均点を取りに行く

一方、社員サイドは「そんなことではモチベーションは上がらない。むしろ、会社に誘導されているような気がして冷める」という考えが強かった。

しかし、研究していてもっと興味深かったことがある。それは、**賞をもらった社員本人でさえ、長期的にはあまりモチベーションは上がらず、それどころか下がる可能性も見えてきたことだ。

理由は、若者における横並び意識が強い中で、自分だけが分け与えられることへの違和感だ。最も公正な分配方法は平等分配だと考えるような若者にとって、強制的に差を付けられることは落ち着かなく、人目が気になる負の要素でしかない。

したがって、競争的要素が発生した時点で、そこには近づこうとしない。仮に競争を強いられたとしても、絶対に全力を出さない。周りを見て、平均点を取りに行くだけだ。

『先生、どうか皆の前でほめないで下さい―― いい子症候群の若者たち』(著:金間 大介/東洋経済新報社)