謝罪は一切ないまま
こちらが相手にしなくなった頃、上の部屋でたくさんの子どもが遊びまわる音がすることが増えた。育ち盛りの子とママ友が集まるパーティなのか。騒音に文句を言いに行くのも、相手の術中にはまりそうでイヤだ。
今度は団体戦らしいと、またも友人に電話をかけると、「あなたへの嫉妬じゃない?」と言われた。「優雅に習い事したり、おしゃれして外出したり」。私は普通の格好だと思っているし、教室に行けばもっと素敵な人がいる。
でも言われてみれば、私が出かける時、コーポの主婦たちがちらちらこちらを見ながら立ち話をしていたこともあった。私のことが気に入らないのだろうか。でも「ここに一生住むわけじゃない」と割り切るよう努力した。最悪の出来事が起こるまでは……。
夫が出張中のある朝、私はのんびり遅めに起床。台所に入ると異変に気づいた。「壁の色がおかしい」。即座に着替えて大家さん宅へと走った。しばらくして業者の人たちが数人で来てチェックを開始。どうやらトイレの天井の水漏れがひどいらしい。当然、上階の家にも調べが入った。さすがに私も限界だ。
翌日、出張から帰宅した夫は、汚れた壁を見ながら言った。「知人の親がマンションを建てていて来年完成するんだ。賃貸だけどよかったらどうぞって。1階にスポーツクラブが入るらしいよ」。夫は隣人に悩む私のことをちゃんと考えてくれていたのだ。万歳!