人生の重要な出来事が列車での出会いで決まった

今の私の人生を作り上げてきたのは「絶対」と言い切れるくらい、人との出会いによるものです。

『扉の向う側』(著:ヤマザキマリ/マガジンハウス)

「親は選べない」という言葉の通り、人生で最初に出会ったのが自由奔放に生きた母です。母は生まれ育った土地を離れ、自力で北海道に渡り、自分の生きる世界を開拓してきたエネルギッシュな人間です。

その母に「貧乏しても絵をやりたいのなら、それを理解してくれる人のいる場所を見て来なさい」と、14歳のときに約1カ月間、フランスとドイツをひとりで旅に出されました。子供を信頼していなければできない提案ですが、周りからは「なんてことやってるんだ」と散々非難されたようです。当然ですよね。

でも、その旅に出されたおかげで、ブリュッセルからパリに向かう列車の中で、イタリア人の陶芸家であるマルコ爺さんに偶然出会いました。私が1カ月も欧州を旅しているのに、イタリアを端折っていると知って激怒されました。全ての道はローマに通ずという言葉を知らんのか!と(笑)。

その後、母とマルコの陰謀で、日本の高校を途中で辞めてフィレンツェの美術学校に留学。その18年後にはマルコ爺さんの孫と結婚したわけですから…。私の人生におけるとても重要な出来事の数々が、たった一瞬の、偶然の列車の中での出会いで決まってしまったという。