11月12日、大相撲九州場所が福岡国際センターで始まりました。先場所優勝した大関・貴景勝の綱とりに注目が集まりますが、今場所はまた横綱不在…。『婦人公論』愛読者で相撲をこよなく愛する「しろぼしマーサ」が今場所もテレビ観戦記を綴ります。

前回「大相撲秋場所、決定戦で貴景勝が4回目の優勝。21歳の熱海富士は大関と元大関の力に初優勝逃す。来場所はルーティンも磨いてほしい」はこちら

大関・貴景勝の綱とり

大相撲九州場所が福岡国際センターで始まった。今場所最大の注目は、先場所優勝した大関・貴景勝の綱とりだ。横綱昇進は大関の2場所連続優勝が原則で、貴景勝は3回目の挑戦となるが、その内容が問われている。初日は先場所負けた小結・北勝富士を、貴景勝は危なげなく押し出した。

大関の霧島と豊昇龍も勝利し、3大関は白星でスタート。

横綱・照ノ富士は、夏場所に優勝し、名古屋場所で1勝3敗11休、先場所は全休し、今場所も腰椎椎間板性腰痛で休場。前頭筆頭・朝乃山は左ふくらはぎの肉ばなれで休場し残念だ。人気力士が休場してどうなることかと思ったら、初日は充実していた。

中入りから12番目までに物言いが3番。そのうち2番が行司軍配差し違え。土俵際でのきわどい攻防は最近の傾向でもある。午後6時に終わるNHK大相撲は3分延長となった。

対戦相手には迷惑だが、勝った力士の魅力が一方的に出る相撲が良かった。実況の太田雅英アナウンサーは、「押し込んだ。玉鷲強い!」「突きたてる。王鵬力強い!」「突き切りました。大栄翔の勝ち。完勝です」と、勝負が決まると突き押し相撲の圧勝の迫力を声で伝えていた。

貴景勝の綱とりに話を戻すが、私は、場所前に貴景勝の今年を振り返り、その波乱をしみじみと感じた。初場所は12勝3敗で3回目の優勝を果たしたものの春場所は3勝4敗のあと休場し綱とりどころではなかった。夏場所は8勝7敗、名古屋場所は全休、そして先場所は11勝4敗で4回目の優勝。

この優勝は、21歳の期待の力士である熱海富士(先場所は前頭15枚目)との優勝決定戦で獲得。しかし、貴景勝は立ち合いで変化してしまい、熱海富士はバッタリと土俵に倒れ、多くの相撲ファンをがっかりさせた。

『大相撲中継 九州場所号』(毎日新聞出版発行)の「やくみつるの一刀両断」を読んで、やくみつるさんの貴景勝の変化に対する怒りがビシビシと伝わってきて、私の熱海富士が低く突っ込んできたからという考えがぶっ飛び、反省した。貴景勝が横綱になるには、古傷の首の違和感などに耐え、真っ向勝負をしなければならないという苦難の道を再認識した。