「グローバルサウス」はインドにとって都合の良い言葉

――今年はインドがG20の議長国として注目を集め、「グローバルサウス」(南半球に多いアジアやアフリカなどの新興国・途上国をくくる新しい総称)の盟主たらんとしているとしばしば報じられましたね。

「グローバルサウス」という言葉を、インドが積極的に使い始めたのは事実です。ただ、いまや世界第三の大国になろうとしているインドが、本当のところ、自分たちを「グローバルサウス」に属すると見なしているかというと疑わしいでしょう。けれども、ロシアのウクライナ侵攻のなかでロシアを非難せず、ロシア産の安い原油や肥料を爆買いしているインドに対して、西側は批判的な声をあげました。

こうしたなかで、インドとしては、「グローバルサウスはエネルギー・食糧価格の高騰に苦しめられているんだ」と主張して自らを正当化できる。とくにG20議長国として、西側と中ロとの対立のなかで、合意文書をまとめるには、ロシアによる侵略行為そのものよりも、戦争の結果生じているグローバルサウスの問題に力点を置いたほうがまとめやすい。

デリーは電線が入り乱れており、インフラの劣悪さがうかがえる(著者撮影)

くわえて、自分たちインドが「グローバルサウスの声」を代弁するということで、中国のアジアやアフリカでの影響力拡大に対抗しようという思惑もあったでしょう。

要するに、「グローバルサウス」という言葉はいまのインドにとって、都合のいいものになったのです。ただ、それがいつまで続くかはわかりません。