「未来の大国」との関係性の構築

――インドはロシアのウクライナ侵攻に対して明確な批判を避けていますね。他方で西側から見たインドは、対中国のパートナーとして連携を模索する動きが活発です。このような「二股外交」の国を、日本は信用していいのでしょうか?

「信用する」というのが、常に我々とともにある、ということを意味するのであれば、信用できないということになるでしょう。インドはどちらかの側に付くという国ではないですから。けれども、いま「グローバルサウス」といわれている多くの途上国は、程度の差はあれ、西側か中ロのどちらかを選ぼうとはしていません。その現実を私たちはまず踏まえなければならないでしょう。

インドを含め世界の多くの国々は、世界の対立構造のなかで自分たちが生き残り、豊かになるために、バランスを取りつつ、利益を確保しようとして行動しています。

そんななかで、インドは間違いなく米中に次ぐ大きなパワーを持つ国になります。そういう「未来の大国」と利益の一致する部分で協力できる関係を構築しておくというのは当然のことで、信用するとかしないといった問題でとらえるべきではありません。

インドにとって日本の技術や知識が不可欠な状況を、今のうちに作り出していくような戦略が求められます。

デリーにあるガンディーの「塩の行進」像(著者撮影)

インドの正体-「未来の大国」の虚と実』(著:伊藤融/中央公論新社)

この「厄介な国」とどう付き合うべきか?
「人口世界一」「IT大国」として注目され、西側と価値観を共有する「最大の民主主義国」とも礼賛されるインド。実は、事情通ほど「これほど食えない国はない」と不信感が高い。ロシアと西側との間でふらつき、カーストなど人権を侵害し、自由を弾圧する国を本当に信用していいのか? あまり報じられない陰の部分にメスを入れつつ、キレイ事抜きの実像を検証する。この「厄介な国」とどう付き合うべきか、専門家が前提から問い直す労作。