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阿川佐和子さんが『婦人公論』で好評連載中のエッセイ「見上げれば三日月」。番組のロケでガーデニング専門店へ赴くことになった阿川さん。園芸は得意ではなかったけれど、行ってみたら興味が湧いたそうで――。
※本記事は『婦人公論』2023年10月号に掲載されたものです

テレビのバラエティ番組の司会を務めることになった。といっても一人ではなく、ずんの飯尾和樹さんとご一緒だ。主に飯尾さんが進行を担ってくださるので、私は隣で茶々を入れていればいいという、まことに気楽な立場にある。

飯尾さんは人気お笑い芸人であるけれど、気負いや自己顕示欲がほとんど感じられず、なんというか、そばにいるだけで心安らぐというか、言ってみれば飯尾さんの持ちネタであるゴロゴロ気分になれる。

『日曜マイチョイス』というタイトルの当番組の趣旨としては、「ゲストが今はまっている趣味をご披露いただいて、シニア世代の視聴者の生きるヒントになれば幸いなり」というもので、毎回、ゲストの「マイチョイス」を紹介する。

だからいちばん大変なのはゲストである。本番の前に地方へロケに行ったり、料理を作ったり、フラメンコを踊ったり、家庭菜園で農作業を行ったりしていただく。その映像を、飯尾さんと私がゲストとともにスタジオで拝見し、「へえ」とか「ほお」とか「楽しそうですねえ」と感心していればいいのだ。

回が重なるにつれ番組制作者は、どうもMCの二人が楽をし過ぎていることに気づいたらしい。妙案を思いついたようだ。

「次回は、飯尾さんとアガワさんに、ロケに出かけていただきます!」

こうして私たちは、夏の炎天下、練馬区にあるオザキフラワーパークというガーデニング専門店へ赴くことになった。