最期までこの家で過ごせるように

基本的にはひとり暮らしですから、家を建て替えるときは当然、自分が年老いたときのことも想定しました。設計時に「私のお棺はどこから出そうかしら」とつぶやいたら、「そんなことまで考えているんですか」と小木に笑われましたけど。(笑)

この家で最期まで過ごすことを考え、床は玄関からすべてフラットに。悩んだのは、エレベーターを設置するかどうか。駐車場が地下にあるので、足腰が弱ったときに地下から2階まで階段で行き来するのが難しくなるかもしれない。でもよく考えたら、エレベーターを使うとかえって足腰が衰えてしまうのではないかと。

私はステージの上でけっこう動き回るんです。階段の昇り降りができなくなるほど足腰が衰えれば、歌手としてステージに立てなくなるでしょう。いつまでもステージで歌いたいからこそ、先々の利便性ではなく、丈夫な足腰を長く保つほうを選びました。

そのために続けているのは、朝晩の体操。ベッドの上で後ろでんぐり返しをして脚を伸ばして……と、ヨガを取り入れた運動をするのが毎日のルーティンです。そして家ではもちろん、仕事で移動するときも必ず階段を使っています。

声の鍛錬も欠かせません。私は14歳からずっと、声楽家・坂上昌子先生のレッスンを受けてきました。先生は現在87歳ですが、いまでも私の師匠。先日も、交響楽団と共演するクラシックコンサートの前に先生のところへ行きました。

クラシックの場合、音域が広くテクニカルなことが必要になるので、きちっと歌えているかチェックしていただきます。先生は私にとって《駆け込み寺》のような存在。「大丈夫よ、良子ちゃん」という一言で、不安は消え、自信を持って本番に臨めるのです。

ちなみに、自宅は《なだれ込み寺》ね(笑)。いまはコンサートツアーで全国を飛び回り、12月にはクリスマスディナーショーも控えています。外に出る日が多くなると、家に到着するやいなや、仕事の疲れも荷物も一緒になってダダダーッとなだれ込むのです。

いまも縫い物の道具や布が散らかっていますし、物が年々増えて困っているのですが(笑)、ホッと落ち着ける空間があるのは本当にありがたい。明日のステージのためにエネルギーをチャージできる、私にとって大切で大好きな場所です。

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