号泣した加トちゃん
結婚8年目、わたしが30歳のとき。小さな子どもを題材にしたテレビ番組を、ふたりで観ていたときのことです。
「うわあ、感動するなあ。かわいいなあ。健気じゃねえ」
わたしが番組内容に胸打たれ、涙をこぼしながら加トちゃんに同意を求めると、加トちゃんはわたし以上に泣いていました。
そしてこう声を振り絞るのです。
「あーたんに子どもがいないのが、かわいそうだ。ごめんな」
そのとき、はじめてわかったのです。お互いに口に出さないだけで、ずっとずっと、子どものことを考えていたんだと、それぞれひとりで悩んでいたんだと。
あんなに声を上げて泣いた加トちゃんを見たのは、後にも先にも、このときだけです。