なんて薄情な人間なんだろうと
いまでも覚えている瞬間があります。
加トちゃんの涙を見た日からしばらくして、年上の友人から妊娠報告を受けました。
「30代半ばまでには子どもがほしかったんだよね。そうじゃないと、わたしも夫も体力的に大変だから」
それまで、友人からの出産報告や子どもが写る年賀状を見ても、素直に「おめでとう」とか「かわいいなあ」と思うだけで、心が乱されることはありませんでした。でもこの日、彼女のこの言葉を聞き、葛藤ややるせなさがこみ上げてきてしまったんです。
と同時に、そんな思いがよぎる自分は、なんて薄情な人間なんだろうと、ゾッとしたのです。それから翌日まで、なんてことを考えてしまったんだろうと、自己嫌悪に陥りながら、頭の中の曇天をかき消すように家事に没頭していました。