優勝予想ができない大混戦
今場所は物言いになる土俵際でのきわどい相撲が多く、審判の協議時間も長く、取り直しもあった。さらに死闘の水入りもあり、後半は優勝予想ができない大混戦状態だった。
しかし、千秋楽最後の3番は攻防がなく、勝負の決まり方があっけなく、瞬きを我慢する必要のない時短相撲。今年最後の大相撲だと思い、椅子から降りて、膝が痛いのに正座して拝見していた私は落ち込んだ。
千秋楽で大変だったのは、追う立場の熱海富士だけでなく、NHKテレビの正面解説の伊勢ヶ濱親方(元横綱・旭富士)だと思う。熱海富士の師匠だ。
熱海富士の取組の時に花道が映り、同部屋の前頭5枚目・翠富士、熱海富士の付け人で幕下優勝した聖富士(さとるふじ)などがいた。実況の佐藤洋之アナウンサーが「チーム伊勢ヶ濱という雰囲気が垣間見える」と表現。東京にいる休場の横綱・照ノ富士も応援しているだろう。ところが、熱海富士は短時間であっけない負け方をした。
負け方がひどくて、伊勢ヶ濱親方をそっとしておいてあげたいところだが、佐藤アナウンサーはアナウンサーの使命として、熱海富士の敗因を聞いた。
「ちょっと立ち遅れしましたね。廻しも取れなかったですね。下ばっかり向いて」、「前に出ていないですね、足が。一歩出て止まって」、「(立ち合いで)真っすぐ当たっていないですね。真っすぐ行かないと次の足が出づらいですからね」と敗因を分析して語っていた。
熱海富士は、先場所は単独トップだったのに本割で朝乃山に破れ、優勝決定戦で貴景勝に敗れている。2場所続けて優勝を逃し、伊勢ヶ濱親方も熱海富士も悔しいことだろう。