「おかしい」と感じてから受診まで「平均4年」の衝撃

それでも、多少の異変を感じたからといって、すぐに認知症の専門医を受診する人はまれです。

生活習慣病は“早期発見、早期対応”が回復の決め手であり、それは認知症も同じこと。最近の研究では、年齢に関係なく脳の神経細胞を増やすことができるとわかっています。

また初期のアルツハイマー型認知症に関しては新たな治療薬が開発されたこともあり、早期発見がより重視されています。

しかし、現実はどうでしょうか? 認知症の患者さんは、最初に自分が「おかしい」と感じてから、専門の医療機関を受診するまでに平均4年もかかっていることが、世界的権威のある医学誌『ランセット』で2021年に報告されました。

これは世界の78の研究をもとに、6万人以上の認知症患者と、15万人以上の認知症ではない人を対象に分析した信頼性の高いデータです。

そのため、患者さんたちが受診まで4年も躊躇(ちゅうちょ)している事実は、私たち認知症専門医にとって衝撃的でした。

認知症は、発症する原因によって「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」の4種類に主に分けられますが、どの場合でも、放置しておく歳月が長くなるほどUターン(回復)が難しくなるからです。