運転士の割り振りは「組めないパズル」

引き継ぎを受け、仕事を始める。日中の時間帯はバスの遅れやトラブルなどは少なく、落ち着いた時間帯だ。平和な空気が流れている。

ただし、私の机だけは違う。

『逆境路線バス職員日誌 車庫の端から日本をのぞくと』(著:綿貫渉/二見書房)

明日乗務する運転士が決まっていないためだ。世の中には放置しておけば自然と時間が解決する悩みも多くある。しかしこれは放っておいても何も変わらない。

明日の該当のバスが運休になってしまい悲惨なことになるだけだ。とにかく明日の運転士をどうにかして見つける方法を考える。

バス運転士の労働時間のルール(退勤から出勤は8時間以上あけるなど)が多くあるため、単純に「俺がやるよ!」という人に頼めばいいわけでもなく、法定時間に引っかからないように運転士を決める必要がある。

ひとつの勤務を埋めるために、ほかの運転士の勤務を何人もずらし、何とか労働時間のルールに沿わせるということもたびたびある。まるで終わりのない複雑なパズルを解いているようだ。

しかも理論上パズルが組めても、肝心の運転士のOKがないとピースははまらない。パズルよりも難解である。ちなみに運転士の勤務枠を埋めるという仕事は本来の運行管理者の仕事ではない。

明日乗務する運転士が決まっていないという状況は急な体調不良者が出るなどの場合に発生するものであり、日常的には発生しないはずである。

しっかり152名の運転士がいれば毎日のようにパズルを解く必要はなく、もう少し余裕をもって仕事ができるのだが、実際には142名しかいない。

運転士不足によって運転士の1名あたりの仕事が増えるのはもちろんだが、それを支える運行管理者の仕事も増えているのである。