夜になってもまだ見つからない
勤務パズルを解きつつ、日々入力する書類の作成も行うと、夜になった。
20時からの私の夕食休憩も終わり、21時。夜の帰宅ラッシュは19時前後がピークであるため、21時となれば営業所の仕事も落ち着いてくる頃かと思うかもしれないが、逆である。
21時過ぎに夜ラッシュの運行を終えたバスが続々と帰ってくる。私はというと、いまだ明日の運転士がまだ決まっていない。こんな夜遅くになったらもうどうにもこうにも手が出ないのでは? と思うかもしれないが、この時間が最後のチャンスである。
具体的にどうやって運転士を探すのか。もちろん休みや退勤後で営業所にいない運転士に電話をかけて依頼するのもひとつだが、職場を離れたら拘束時間ではないので、なるべく電話はかけたくない。
休みを満喫しているのに職場から電話がかかってきたらいい気分はしないだろう。快く電話に出てくれる運転士が大半だが、職場を出ると電話をかけても出ない運転士もいる。そのため、営業所にいる運転士に直接声をかけて依頼するのがもっとも確実だ。
もちろん今までに何もしていないわけではなく、労働時間の制約を避けるために複数の運転士に明日の勤務時間をずれてもらう依頼をした。
これで最後に、21時30分に乗務を終えて帰ってくる運転士の猪俣さんに明日の休日出勤を頼めば無事にパズルが完成だ。
猪俣さんには事前に明日、休日出勤を依頼する可能性があると話し、了承してもらっている。帰ってきた猪俣さんに声をかける。
「お疲れ様です。猪俣さん、明日45番の休日出勤をお願いしたいのですが……」
「えっ、明日? もう決まったかと思ってた。明日はどうしても外せない用事ができちゃって。ごめん!」
まさかの事態である。パズルが崩れてしまった。どうしよう。このままいけば明日は運休が出てしまう。一緒に泊まり勤務をしている石塚さんに助けを求めると。
「あの、明日の45番が決まらないままで、どうすればいいでしょうか」
「どうするって、もう一度ひたすら聞いて回るしかないだろ」
「ですよね……」
自分のせいで明日のバスが運休になってしまうというプレッシャー。運休になったところでクビになることはないし、そもそも運転士が足りないのは私の責任ではないのだが、それでもかなりの重圧を感じる。