「最終的には誰かがやらなくちゃいけない仕事だから……」

どうすれば……と頭を抱えていると、「綿貫くん」と私を呼ぶ声が聞こえる。

「明日の45番が決まってないんだよね。そしたら俺がやるよ」

今朝通勤するときに話をした木島さんだ。しかし、木島さんは明日の休日出勤はできないと言っていたはずだ。

「でも明日って予定があるんじゃないですか? 本当に大丈夫ですか?」

「そりゃあ大丈夫ではないけど……まあ大した予定じゃないし、最終的には誰かがやらなくちゃいけない仕事だから……」

「ありがとうございます、本当に助かります……!」

夜22時前にして、何とか明日の勤務が埋まり、運休せずに走れることがようやく確定した。

※本稿は、『逆境路線バス職員日誌 車庫の端から日本をのぞくと』(二見書房)の一部を再編集したものです。

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逆境路線バス職員日誌 車庫の端から日本をのぞくと』(著:綿貫渉/二見書房)

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