綿貫さん「単純に頼めばいいわけでもなく、法定時間に引っかからないように運転士を決める必要がある」(写真提供:Photo AC)
バスの運転士不足が叫ばれる中、路線バスを減便する動きが全国各地でみられています。日本バス協会によれば、12万1000人の運転手が必要なのに対し、現状11万1000人とすでに1万人不足しており、その不足は今後さらに拡大していくそうです。一方、バスの運行管理者の経験を活かし、交通系YouTuberとして活動しているのが綿貫渉さんです。その綿貫さんによると、今やバスの運転士不足が常態化しているため、運行管理者が運転士に時間外労働や休日出勤を依頼し、何とか勤務を組まなければならない状況にあるそうで――。

明日の運転士が決まってません!

「お疲れ様です、引き継ぎをお願いします」

前任者の結城さんに声をかける。

「おはよう。明日の45番を運転する人がまだ決まってなくて……よろしく頼むよ」

運転士の勤務時間はバスのダイヤにより様々で、勤務のパターンは中央営業所では100通りほどあった。

1番は朝5時00分出勤、昼の13時17分退勤、2番は5時03分出勤、昼の13時11分退勤といったようにバラバラで、100通りあるなら毎日1~100の勤務に誰かしら運転士が割り振られている*1。

そして本来は運転する人が決まっていないという事態は発生しない。しかし、運転士不足が常態化しているため、運行管理者が運転士に時間外労働や休日出勤を依頼して、何とかして勤務を組み、毎日100名の運転士を揃える必要がある。

その100名が明日はまだ99名しか集まっていないので、何とかしてあと1名集めてくれ、というのが結城さんの引き継ぎだ。

【*1】もともと勤務の数が100と決まっているなら、1年で100×365=3万6500の仕事があり、運転士は1名あたり1年で365-124(土日+年次有給休暇)=241の仕事ができるため、3万6500÷241=151.4となり、152名の運転士がいれば欠員は発生しない。本来はこの人数の運転士を雇うべきだが、実際に所属している運転士はこれより少ない。