「早く社会人になりたい。いいことなんて、そんなにないんだから」(撮影:本社 奥西義和)
令和3年度の「全国ひとり親世帯等調査」によると、日本における母子世帯総数は、約119万5千世帯と推計されています。「離婚したとき、『離婚なんてして』という声もあったし『離婚できて羨ましい』という声もあった」と語るのは、シングルマザーとして子育てをしながら、タレントとして活躍している青木さやかさん。青木さんは大学時代、「早く社会人になりたい。いいことなんてそんなにないんだから」と思っていたそうで――。

それなりの大学生活

大学生活は、それなりに楽しかったような気がする。

サークルに入ったり、授業と授業の合間に友達の車でお茶しに行ったり、バーみたいなところでバイトしたり、彼氏ができたりと、勉強以外は、なんでもした。

愛知県は、一家に1台というより、一人1台車を持っているような感じで、わたしも大学時代は自分の車で移動していた。

『私をスキーに連れてって』の映画をみて、流線形のセリカGT─FOURに乗った。三上博史と恋愛してる気分になった。

スキーも流行っていた。

ツアーでスキーに行った。

深夜のバスで早朝にスキー場に着く。志賀高原とか、苗場とか。何しろお洒落な響きだった。苗場。

朝方スキー場に着いて、宿が開くのを待ち、スキーウェアに着替えて、雪山に出て、リフトに乗って、おりて、またリフトに乗った。

なにも楽しくなかった。

寒いし、眠いし、うまく滑れないし、なんで雰囲気にのまれて何度もスキーツアーに行ったのか謎である。

一度なんて、つき合い出した先輩に誘われて、男女6人でツアーに行ったとき、わたしはその先輩しか知り合いがいなくて話し相手もいなかったのだが、スキー場にスキーウェアを着て現れたわたしに先輩は、

「スキーウェア、前後ろ違うよ」

とそっと耳打ちしてきた。

わたしは間違えてるのにカッコつけて登場した自分がおかしくてたまらなくなり、笑いが止まらなくなった。

その様子を先輩は、ただじっとみていた。それから2泊3日、先輩はわたしに話しかけてこなかった。嫌われたんだと思うんだけど、その2泊3日は地獄だった。帰ってから手紙がきて、

「別れたい」

と書いてあった。