社会人になっても

“社会人になれば変わる”。わたしは期待した。

就職試験は全て落ちた。すべり止めとして受けた会社も全部落ちた。大学の進路相談の先生から、この企業だけは受けてはいけないよ、誰でも就職できるけど、と言われていた会社も落ちた。自信を失うには十分すぎる出来事だった。

と言っても、きっとわたしだけではなかった。就職氷河期と呼ばれている時代で、大学卒業後、留学する者もいたし、結婚する者もいた。

わたしは、名古屋でタレントになった。と言っても仕事がたくさんあるわけではなく、ちらほらとイベントMCや、太平洋フェリーの船内MC、キャラクターショーの司会、選挙のウグイス嬢をやっていた。

いつも多くのタレントたちと仕事を取り合うのだ。

まず会社のマネージャーに覚えてもらわなくてはならない、オーディションに呼んでもらえるメンバーに選ばれなくてはならない、現地でスタッフさんに次も呼ぼうと思ってもらわなければならない、まあ、仕事とはそういうもんだが、それは競争に勝ち抜いてこそ残っていけるものだと信じて疑わなかった。

司会のスキルは低かった。人間的なとっつきやすさは、ない方だった。

女性をウリにするのは、当たり前だった。

そんな部分で仕事とりたくないんだけど、なんて言いっこなしよ、というのはわかってた。わたしも、うまくやりたかった。