オトコたちを追い抜かす
なにしろ、わたしは男心がわからない。だから仕事で上に上がっていく手段、「オンナを出す」。これはわたしには使えなかった。わたしは、オトコと競争することにした。オトコに好かれるオンナはムリだから、オトコを追い抜かせばいい。
こんな考えをもつわたしは、オトコたちにとって目の上のたんこぶだったと思う。
仕方なかった。成功しなきゃならないし、うまくホステスできないし。
飲み会の席や電車の中でのオトコの視線には辟易(へきえき)していた。自意識過剰で被害者意識の強いわたしにピッタリのギャグが見つかった。
「どこ見てんのよ!」
秀逸なギャグ、心の叫びであった。
わたしは、競争して勝ち抜いて上っていった。きっとあの瞬間、日本一有名になった。上りつめたとき、わたしは思った。
勝った。
全然楽しくない。
※本稿は、『50歳。はじまりの音しか聞こえない 青木さやかの「反省道」』(世界文化社)の一部を再編集したものです。
『50歳。はじまりの音しか聞こえない 青木さやかの「反省道」』(著:青木さやか/世界文化社)
話題作『母』の刊行から2年。
50歳になった青木さやかが、等身大の自分を率直に綴った書き下ろしエッセイ集。