楽しそうな毎日も、楽しくない

大学時代は、暇でエネルギーが有り余っていた。

わたしの通う大学は、愛知県瀬戸市と岐阜県の県境で、山道を登っていったところにあった。広大な敷地内に煉瓦造りの校舎や小さな教会もあって、緑や木々も多く美しい風景であった。きらきらと太陽を浴びて光る池のまわりには、番(つが)いの白鳥がいた。

わたしはその景色をみながら思った。早く社会人になりたい。いいことなんて、そんなにないんだから。

綺麗な景色をみたって、ユーノス・ロードスターに乗り換えたって、好きな子とまるは食堂に海鮮食べに行ったって。そこまで心が躍らないんだもの。わたしはずっと楽しくないんだ。心が。

ユーノス・ロードスターはグリーンだった。屋根は幌だった。中古で友人から買ったのだが、あるとき幌が破れた。雨が落ちてくるので、わたしは幌の穴の空いているところから傘をさしながら運転した。

グリーンのロードスターがビニール傘をさして走っている、と街がざわついた。そんな楽しそうな毎日も、楽しいと思えなかった。