完全にリラックスして自由に過ごせるわけではない

また、営業所などの休憩施設がある場所での休憩である必要はなく、駅のバスの折り返し時間であっても休憩時間とみなすことができる*3。

もちろんすべての休憩を10分の折り返し時間にしてしまうと食事もとれず現実的ではないが、出庫してから5時間以上まとまって休憩を取れなくてもダイヤが組めるようにする措置だ。

『逆境路線バス職員日誌 車庫の端から日本をのぞくと』(著:綿貫渉/二見書房)

ただし、折り返し時間を休憩にするということは、遅れが発生するとそのわずかな休憩時間も削られてしまうということでもある。

ほかにも、駅などの始発停留所ではバス停で乗客が待っている。出発時刻ギリギリまで休憩時間扱いなので早めに乗客を乗せる義務はないが、バスが来ているのになぜ乗せてくれないんだという無言の視線はどうしても気になるだろう。

小野さんの会社では折り返し時間は一部が労働時間扱いとなるなど、各社で取り決めが異なるが、グレーゾーンな扱いであるのは事実だろう*4。

折り返しの時間を休憩時間扱いとするほうがダイヤを組む上ではやりやすいかもしれないが、やはり自由に休憩できる環境でなければ労働時間にすべきだろうと思う。特に中休勤務は朝と夕のラッシュの合間がすべて休憩になってしまう。

もちろん休憩時間に給料は出ない。その休憩をうまく活用できればいいが、やはり家*5にいるのと違って完全にリラックスして自由に過ごせるわけではない。

そう考えると、この長い拘束時間に対する賃金はほかの業種と比べて安いのではないだろうか。

【*3】私が勤めていた会社ではそのような運用はしていなかったが、小野さんの勤める会社を含め、そういった運用をしている会社のほうが多い。

【*4】この折り返し時間を休憩に扱うことについては、法律上は認められているものの、近年ではさせぼバスの運転士が「乗客の対応などがあり、事実上の労働時間である」と会社を相手に訴訟を起こすなど、たびたび法廷で争う事態になっている。

【*5】中休の合間は家に帰ってもよいが、往復の時間がかかるので営業所で過ごす人が多い。