プライベートの運転にも緊張感がある

私も恥ずかしながら、プライベートで北海道をレンタカーにて旅行中、周囲に何もない直線の道路で速度を出し過ぎてスピード違反の取り締まりを受けたことがある。

制限速度が時速50kmのところを時速70kmで走行してしまい、時速20kmぶんの超過であった。この場合、違反の点数は2点が加算され、反則金は1万5000円を納付する。

当時は鉄道会社に勤めていたが、業務で車を運転するわけではない。そのため特に会社に報告の必要はなく、反則金を支払って次回以降は気をつければそれで話は済んだ。

万が一その後も連続して違反をして免停となってしまっても、反則金の支払いは必要だが業務に支障はない。

それが、バス運転士であれば、プライベートでの運転時に違反で取り締まりを受けた場合は会社に報告しなくてはならない。あと何点の違反で免停になってしまうか会社側が把握しておくためだ。

たとえ2点の違反であっても、スピード違反のような自分に非があり安全上に問題がある違反は大変報告しづらいだろう。

上司にも間違いなく怒られる。そしてその後は再び違反をして点数が加算され、免停や免許取り消しとなってしまわないよう、バスの運転時・プライベートでの運転時ともに今まで以上に緊張感をもって運転しなくてはならない。

私のようなバス会社の事務員や、鉄道会社の職員であれば、免許取り消しになることによって一部の業務に支障はあるかもしれないが、本来の仕事ができなくなるまでには至らない。

数年に1度しか車を運転しない人が免許取り消しになるのと、バス運転士が免許取り消しになるのでは、受ける影響は何百倍も違う。こういったプレッシャーを常に感じるとなれば、バス運転士という仕事は心身ともに負担の大きな仕事であることは間違いないだろう。

※本稿は、『逆境路線バス職員日誌 車庫の端から日本をのぞくと』(二見書房)の一部を再編集したものです。


逆境路線バス職員日誌 車庫の端から日本をのぞくと』(著:綿貫渉/二見書房)

元バス営業所職員兼JR職員の交通系YouTuber綿貫渉がバスから日本を見る、まったく新しいバスエッセイ!

日本初・定常運行の自動運転バスに乗ってみた感想や、「キングオブ深夜バス」として知られるはかた号やアメリカのバス乗車記、テレ東「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」プロデューサーとの対談も盛り込んだ、今までにないバスに焦点を絞った1冊!