●離職者の8〜9割が後悔
もし在宅介護を選ぶ場合、心に留めておいていただきたいのは、なるべく介護離職はしないほうがいいということ。いろいろな調査報告を見ても、介護離職した方の8〜9割が離職を後悔していると答えています。また総務省のデータでは、再就職できた方は全体の3〜4割。35歳ぐらいまでなら再就職も可能ですが、それ以上だと厳しいのが現実です。
介護の専門職の方にお話を聞くと、「一般の方が離職して介護に専念しようと思っても、実際はたいしたことができませんよ」と言います。お金の不足を自分で補おうとしても、介護の訓練を受けたプロではないので自己満足に終わってしまいがち。離職して経済的に余裕がなく、心身ともにストレスがたまるばかりだと。
それより、どうすればプロの手を借りながら仕事を続けられるかを工夫するのが得策。一定規模の会社なら必ず、育児介護休業法の中に定められている制度が使えます。例えば介護休業は1年以上雇用されているなどの条件をクリアすれば、正社員か非正規・パートかにかかわらず、93日間は取得できる。3年間の時短勤務といった措置も講じられているはずです。雇用期間が短く要件を満たしていなくても、諦めず会社に相談してみること。
たとえ制度が使えなくとも、介護一色になると精神的に追い詰められるので、極力仕事は続けることをおすすめします。
構成:
古川美穂
出典=『婦人公論』2019年5月28日号
黒田尚子
ファイナンシャルプランナー
1969年富山県生まれ。日本総合研究所在職中にFPの資格を取得し、独立。がんや介護など自身の経験をまじえて相談や講演を行う。『マンガで解決親の認知症とお金が不安です』(監修)、『終活1年目の教科書』など著書多数
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